専門性高いシステムを、誰にどうやって届けるか?山形市にあるオルウェーブビジネス株式会社が開発した「REATAX」は、土地の相続税評価額を地図上のクリックで簡単に算出できるシステムである。このシステム開発者は、稀有な専門性を持つ人物だ。代表の大貫氏は、不動産鑑定士と税理士という二つの国家資格を併せ持つ。本来別々の専門家が担う「不動産鑑定」と「税務」の知見を高いレベルで持ち、国税庁評価基準に忠実に基づきながら、従来専門家が多くの時間をかけて行っていた土地評価を、短時間で実現できる形にした。開発には10年の歳月をかけており、関連特許も取得済だ。このシステムの独自性と有用性は既に注目を集めており、日本経済新聞(東北版)や山形新聞から取材を受け記事化されている。REATAXは「優れたシステム」として完成の域にあった。だからこそ、そのシステムの価値を、どの領域に、誰に向けて届けるのが効果的なのか?REATAXには複数の可能性があった。個人 (相続を意識する土地所有者)税理士 (相続業務を扱う専門家)自治体 (固定資産税評価業務を担う行政)どのターゲットにも展開の余地があったことで、絞り切ることが難しい状況であった。新規事業における複数のターゲットを構造的に整理するコンサルティング選択肢がないと、人は動けない。だが、選択肢が複数あってどれもがそれらしく見えるときも同様である。オルウェーブビジネス社にとってのREATAXもこの状態にあった。個人向けに広く展開する道税理士という専門家に絞る道自治体という公的市場を狙う道どの道も可能性のある選択肢である。この局面で、日頃から付き合いのあった大貫氏から大和青垣ビジネスパートナーズに、一つの相談が持ち掛けられた。「このサービスを、事業として成長させるための整理を行いたい」。大和青垣ビジネスパートナーズは、REATAXが既に持っている強みと可能性を、構造的に整理することから始めた。―― REATAXという良いシステムがありながら次の展開を決められなかった当時、どんなことを考えていましたか?技術的には、良いものができた感触はありました。我々の事務所で、例えば2時間程度の作業時間を必要としていたものを15分程度でできるようになっていました。そして、特許も所得しておりました。まだ販売先を決めかねておりましたが、必ずうまくいくと思っていました。―― 複数の可能性(個人、税理士、自治体等)があるなかで、一人で方向性を決めることの難しさをどう感じていましたか?当面、営業に割ける人員は限られていましたので、効率の良い営業先、すなわち手数のかからない先はどこか、考えておりました。それ以外の視点は、考慮外にしておりました。ただし、営業先での反応が、期待していたものとは違っている感触を持ち始めておりました。「疑似取締役会」を作り出し、複数の視点から事業評価を行う大和青垣ビジネスパートナーズがまず行ったのは、ターゲットごとに市場性・収益性・実行難易度を整理することだった。ただ社内の論理だけで完結させず、第三者の視点を取り入れることに支援の特徴があった。税理士、不動産関係者、金融機関関係者、資産保有者 ―― 立場の異なる10名以上へのヒアリングを通じて、以下の問いを客観的に検証していった。実際にどの層に最もニーズがあるのか導入・利用のハードルはどこにあるのかどのような形であれば、継続的に利用されるのかこのプロセスは単なる意見収集に留まらず、結果として事業を外から見つめ直す、いわば「疑似取締役会」の役割を果たした。多くの経営者が抱える悩みとして、率直で忖度がない意見をくれる第三者がいないということがある。自分一人で事業を進めていると、親身になりながらも時に辛辣な意見を寄せてくれる相手を見つけることは難しい。気付けば自分の考えだけが反映される「思考の沼」に陥る。疑似取締役会は、この沼から脱出するきっかけとなった。利害から距離を置いた「健全な思考を常日頃実践している社会人達」のコメントが、経営判断に客観的な視点を持ち込んだのだ。REATAXの場合、「どの層に本当のニーズがあるのか」が、推測ではなく手応えのある事実となった。意思決定の納得感が大きく高まった。―― 第三者へのヒアリングや客観的な視点が入ったとき何を感じましたか。一人で考えていたときと何が変わりましたか?受けていた感触を裏付けるものでした。多くの方に、有用性を感じていただけない状況でしたので、残念に思いましたが、“やはり”という感じでした。漠然と感じていたものが、確信に変わりました。―― 外部の視点が入ったことで、見えていなかったものが見えたという瞬間はありましたか?大いにありました。最大の問題は「誰が、いくら払うのか」がまだ十分に固まっていないことです。すなわち、ビジネスモデルが明確になっていない!ということが分かりました。技術はかなりできている。知財も増えている。しかし、ビジネスモデルは技術ほど強くないなと理解することができました。急がば回れ――狙いを絞るという意思決定検証の結果、整理された方向性は意外なほどシンプルなものだった。それは、短期的な拡大を狙った広範囲へのアプローチではなく、税理士を起点とし信頼関係をベースに段階的に展開していく ―― という道だった。個人に向けての広範なアプローチや広告展開も、検討の対象になっていたが、ターゲットの特性と費用対効果を踏まえると、狙いを絞った展開の確実性がより高いと判断された。いわば「急がば回れ」の決断である。クライアント自身が「税理士」という状況の中で、税理士仲間という専門家の信頼を介してネットワークを広げることで、サービスの信頼性を維持しながら着実に評価を積み上げていく。スピードよりも、信頼の質を選んだ。実現可能性は低いが『見映えが良く斬新な提案』で経営者をいい気分にさせるのではなく、事業実態に即し地に足の着いた確信の持てる道を見極める。経営者にとっての“確信”を最優先することが、大和青垣ビジネスパートナーズの支援姿勢である。意思決定が、行動に変わっていくプロセス今回の整理を通じて、事業の方向性は定まり、次のアクションに向かうことができた。重要なことは、一時止まっていた意思決定が、自信を伴いながら“行動”へと変わったことである。現業との兼ね合いを考慮しながら、税理士ネットワークを活用した紹介・検証を再開するという方針のもと着実に次のステップへ進む準備が整った。―― この6か月を経て、いま始められている一歩はどんな気持ちで踏み出されていますか?現状では、利用者に有用性が届かない状況になっていることが分かったので、明確に強いビジネスモデルにしなければならないと感じ、システムの扱う範囲を広げる方策を取ることにしました。メリットが明確でわかりやすい分野を扱うことにし、現在、その部分を加え改良中であり、特許の申請も行ったところです。―― 方向性が定まったことで、行動に移しやすくなった実感はありますか?改善のためには様々な方向性があると思いますが、今回のコンサルティングにより、自分なりに方向が見えてきた実感はありました。本事例が示す価値本事例は既に優れたサービスを持つ企業や経営者こそ、「どの方向に進むべきか」を客観的に整理するサポートが必要だということを示している。新しい派手なアイデアを持ち込むことが経営支援の本質ではない。既に持っている強みや可能性を構造的に整理し、第三者の目線を加え、納得感のある意思決定へつなげること。つまり、事業が“前に進む状態”を作ることに価値がある。経営者が今後の進め方を一人で決め切ることは難しい。だからこそ、外の視点を持ち込む仕組み-疑似取締役会のような仕組みが意思決定の質を引き上げるのだ。―― 一人で考えるのと、第三者と並走しながら整理するのとでは、何が一番違いましたか。新規事業で模索する中、様々な事柄を明確にすることができることだと思います。一人で漠然と感じていることを、確信をもって整理できます。―― 同じように一人で意思決定に悩む経営者に、今回の経験から伝えたいことはありますか。経営者は自己の責任で意思決定を行わなければならないものですが、案外孤独で、迷うところも多いのではないかと思います。並走してくれるパートナーの存在は、いかに心強いかを実感することになりました。このような経営者の方へ大和青垣ビジネスパートナーズは、事業を自分らしく前に進めたいと真摯に向き合っている複数の選択肢の中で優先順位を決めかねている一人で考えるだけでなく、対話を通じて整理したい。このような経営者の方々と、経営者仲間として並走しながら、判断の軸を明確にして意思決定を前に進める支援を行っています。興味をお持ちの方はご相談ください。※本事例はオルウェーブビジネス株式会社様のご協力のもと掲載しています。※REATAXについて詳しくは、https://reatax-web.jp/ をご覧ください。